たちばな慶一郎 過去の国政報告

国政報告(第59号)

2010年10月30日(土)

 今週は涼しさを通り越し、寒ささえ感じる一週間でした。24日(日)、北海道五区の衆議院議員補選があり、我が党の町村信孝さんが当選しました。私にとっては公務員時代の仕事を通じて「第2のふるさと」ともいえる土地柄で、知人を頼って2回応援に入ったので、ひときわ嬉しい勝利でした。菅改造内閣発足後、最初の国政選挙で与党には厳しい評価が下され、今後の政権運営にさらに慎重さを求める結果といえると思います。

 国会は、29日(金)の補正予算提出までの間、各委員会で一般質疑が行われました。私も経済産業(水曜)・総務(木曜)の両委員会で2日続けて質問に立つ機会を頂きました。要点は地元紙でも報道頂きましたが、ここでは詳しく報告したいと思います。

 初質問となった経産委員会では、景気対策の要となる補正予算の充実を求めました。7月から民主党代表選をはさんでの「空白の3か月」は、円高が急激に進み、日中関係の悪化を背景にレアアースの供給が不安定になるなど、経済に大きな損失をもたらしました。今月の政府発表で景気回復の動きも足踏み状態に陥ったとされ、菅内閣の経済運営責任は重いと考えます。そこで、限られた財源を有効に使う対策を5点求めました。①昨年から効果を発揮している環境対応型工場への立地補助金。②来年7月の放送デジタル化への対応を含めた家電エコポイント制度の延長。③省エネに優れたLED電球の街灯等への活用。④学校の耐震化や駅のバリアフリー化など製造業にも需要の及ぶ公共投資の拡充。⑤商工会議所や商工会など地域の経済団体の相談機能の充実。これらの施策を提起し、お金が経済の中で循環するよう求めました。さらに、今年度末で期限が切れる水力発電施設所在市町村への交付金の継続を求め、大畠大臣から「延長したい」との答弁を頂きました。

 2年目の総務委員会では、国家公務員給与の人事院勧告の取り扱いを質問しました。菅総理や片山大臣は、マニフェストの「総人件費2割削減」達成のため、勧告を超えた給与削減を検討中と報道されてきました。しかし、通常国会で廃案となった公務員制度改革法案の審議の際、仙谷官房長官は、公務員の労働基本権が制約されている現状での勧告を超えた削減は困難と答弁していました。この不一致を念頭に、削減に踏み込むには、労使間での何らかの意思疎通が不可欠ではないか、その努力を内閣は重ねているのかと質しました。結果、片山大臣の公務員労組代表との会見はこれからで、覚悟不十分との印象を持ちました。案の定、私の質問当日に、菅内閣は勧告を超えた削減を断念しました。この一事を見ても、「有言実行内閣」の看板は疑問です。今必要なことは「大風呂敷」でなく、課題の着実な解決の積み重ねではないでしょうか?菅内閣の行く末をしっかり見つめていきます。

国政報告(第58号)

2010年10月23日(土)

 今週の国会は、各委員会で一斉に大臣挨拶、一般質疑が始まりました。私の所属する総務委員会、経済産業委員会でも、片山総務大臣、大畠経産大臣の挨拶を受けて来週前半に質疑に入る予定です。補正予算案の提出は29日(金)と言われていて、一連の論戦を受けた形になるようです。

 円高については相変わらず81-82円の水準で、10月の政府の月例経済報告でも景気の判断が「足踏み状態」と下方修正されました。補正予算では、景気の底支えと雇用確保のため、「お金が民間経済の中で循環する」メニューが求められます。また、当初予算で公共投資が18%削減され、先行きが懸念される地域経済へのテコ入れが必要です。これまでに判明している政府の方針では、自治体への交付税の追加配分や交付金の新設、公共投資の増額、企業立地への助成、新卒・若年者の雇用対策など、多岐にわたる内容が盛り込まれるようです。とはいえ、地域の立場で気になる点が残されています。

 第一は、米対策です。戸別所得補償制度の下でも、引き続き25万トン程度、生産が需要を上回り、猛暑の影響で品質も厳しいため、米価の下落が続いています。農林水産省も新年度予算の概算要求では政府備蓄している古米を食用から飼料用に処理する方針です。しかし、来春まで事態を放置するのではなく、この補正予算に前倒しして何らかの手当てをすべきというのが、我が党の主張であり、宮腰議員・山田議員が農林部会を舞台に頑張っておられます。

 第二は、鉄道・運輸機構の剰余金の取り扱いです。旧国鉄の資産処分等で1兆4500億円も積み上がっていることが判明しています。野田財務大臣は、衆院予算委員会で一般会計へ繰り入れる考えを示しましたが、北陸新幹線を始め整備新幹線の建設財源にも充てるべきと、長勢議員が中心になって党内の議論をまとめておられます。

 第三は、東海北陸道の四車線化やスマート・インターの新設です。これらの事業は、前原前国土交通大臣の下で、効果の検証も終わり、高速道路料金体系の見直しで財源を産み出す方針が春に示されたのですが、民主党内で議論がまとまらず、棚上げになっています。今回、5兆円に及ぶ大型補正を組むのであれば、地域経済へのプラス効果もあることからメニューに入れたいものです。

 以上、個別の項目を3点述べましたが、国全体として補正予算の組み方に大きな問題があります。それは、財政が厳しい中、「いかに有効にお金を使っていくか」という視点で政策全体を吟味する姿勢が政府・与党に欠けていることです。実行困難となりつつある、昨年夏のマニフェストをいつ総括するのか、そして社会保障制度の再構築を含め、今後の国の歳入・歳出の在り方をどのように議論していくのかが問われています。まさに、菅総理の「有言実行」の正念場であり、財政通の野上議員にも活躍頂き、補正予算の審議を通じてしっかりした答えを出していかなければなりません。

 私も、所属委員会での質疑等を通じ、地域と中小企業に効果のある経済対策の実現や国民に納得頂ける公務員制度の構築に取り組んでいきたいと思います。臨時国会もいよいよ中盤、1日1日を充実させて頑張ります。今週は、東京からの報告でした。

国政報告(第57号)

2010年10月16日(土)

 10月半ば、東京でもイチョウの実がなり、秋らしくなってきました。今週は、県遺族会と南砺市議会の皆さんが上京され、激励を頂きました。臨時国会は火・水に衆院、木・金に参院の予算委員会があり、景気対策、尖閣諸島の事案、小沢前幹事長の問題など、国政全般にわたる議論が展開されました。

 最近の円高と日中間の問題で、改めて国際社会においての我が国の在り方、すなわち外交が焦点となってきました。80円台突破をうかがう円高には、通貨政策上の国際協調が欠かせません。日中関係では、確固たる意思を持ちながら、しなやかな対応が必要です。仙谷官房長官の「柳腰」発言は、言葉の本当の意味は違うようですが、主張されたかった点は理解できます。ただ、尖閣問題の初動の対応に「しなやかさ」があったかと言えば、そうではなく、内閣として猛反省すべきです。

 景気の先行きは厳しく、経済対策・補正予算が内政の当面の焦点です。どうやら月末には国会に提出されるようで、規模は5兆円台と、8月末の我が党や公明党の主張に沿った形になる見込みです。当初予算では、子ども手当などマニフェストの主要項目の実現にお金をシフトさせ、公共事業費は18%カットされました。これでは地域経済に秋以降、深刻な影響が出ると私も質問したのですが、今次補正ではこのカット分がほぼ手当てされるようです。自治体には久方振りに地方交付税の追加配分も予定されており、歳出面ではそれなりの内容にまとまるものと思います。

 問題は、歳入面と経済政策の基本的考え方です。当初見積もりに比べて税収が増え、国債の金利が低いので、この差額2兆円程度を歳出に向けるようですが、財政再建の点では疑問です。公共事業費は建設国債でまかない、赤字国債の発行を減らす方法もあります。また、「コンクリートから人へ」という当初の経済政策は、この補正予算では、相当規模の公共投資で景気波及効果をねらう以上、転換したことを率直に認め、反省すべきです。

 予算委員会を通じ、政権交代から1年で、当初のマニフェストの政策の主要項目に無理があり、内政・外交ともに現実的な政策にシフトせざるをえない「曲がり角」に立ち至ったことがはっきりしてきました。遠からず、農政も高速道路無料化も政策の修正は避けられないでしょう。「ねじれ国会」において、与野党の協力で国を前進させるために、菅内閣は、当初のマニフェストを総括し、修正すべきは修正し、現実的で具体的な提案を野党にするべきです。しかし、まだこれまでの経緯にこだわりがあり、小沢前幹事長の「説明責任」の履行を促す姿勢が見えない現状では、出口は見えないと思います。一議員として、微力ですが、政治の歯車が今一歩、良い方向に回るよう、総務・経産委員会や質問主意書で努力していきます。

国政報告(第56号)

2010年10月9日(土)

 今週は、4日(月)・5日(火)に菅首相がASEMに出席して中国の温首相と「立ち話」会談を持ち、6日(水)からの3日間で衆参両院本会議で代表質問がありました。尖閣諸島の一連の事案はやや沈静化したものの、船長の逮捕、勾留延長、釈放と内閣の対応が迷走し、国際的にも我が国外交の不手際を印象づけた責任も残ります。円高については、日銀のゼロ金利政策への復帰や5兆円規摸の補正予算案を柱とする、緊急総合経済対策が閣議決定されたものの、週末には1ドル81円台に突入するなど、課題は解決されていません。

 先行きが視界不良な中、代表質問で菅首相は答弁書を読み上げる慎重な姿勢が目立ちました。しかし、我が党の稲田議員の「官僚答弁を読むのではなく、自分の言葉で」との注文に「それなら質問も原稿無しで」と切り返した答弁は、現場で聴いていて「大人げない」という印象でした。案の定、「内閣は質問の事前通告は不要という趣旨か」との抗議を受け、翌日の答弁の冒頭で陳謝する羽目になりました。事案としてはそれで決着しているのですが、その場の切り返しだけで、肝心の答弁内容の中身が薄いことが、菅内閣の抱える根本的問題です。「内閣を続けたいけれども何をしたいのかわからない」ということです。

 社民党の重野議員から、中身の伴わぬ「有言実行」では、「大風呂敷を広げただけと懸念される」との忠告に、「あえて大風呂敷を広げているんです」と開き直った菅首相です。自分が議会で発した言葉にどこまで責任を感じておられるのか、市議会での答弁経験のある私には寂しく思われる首相の答えでした。

 緊急総合経済対策については、疲弊する地方経済には学校の耐震化の促進や必要な公共事業の実施など、一定の効果があるものと思います。地元の立場では、この際、スマートICの設置や妊産婦検診無料化の国の補助額の継続など実のある内容となるよう声を出していきたいと思います。一面、「コンクリートから人へ」のスローガンをはじめ、民主党の昨年夏のマニフェストの思想とは大いに異なる政策を展開している現状です。政府与党として、従前の方針についての率直な自己批判が必要ではないかと思います。そして小沢前幹事長の強制起訴への対応が問われます。

 展望の見えぬ国会を後に、幸い会議のなかった8日(金)、奈良で行われた「平城京遷都1300年記念式典」に参列させて頂きました。越中ゆかりの大伴家持卿が式典中の劇の主役となり、天皇陛下のお言葉にも万葉集と家持卿が触れられ、大いに感激致しました。当時、国号を「日本」と定め、大陸や半島の律令制度や文化の吸収にも務め、この国の土台を築くために努力された先人の足跡をしのび、21世紀の日本の前進への決意も新たに、来週も議事堂に向かいます。

国政報告(第55号)

2010年10月2日(土)

 今週は、30日(木)に中国漁船船長の釈放事案を主題に衆議院予算委員会の閉会中審査があり、明けて10月1日(金)、臨時国会が開会されました。会期は12月3日までの64日間、主たる案件は補正予算と人事院勧告を踏まえた公務員給与の改定です。内閣では、参院選前の通常国会で廃案・継続審査となったものを含め、35本の法律案を提出する予定です。しかし、代表選や内閣改造で2か月余りの「政治空白」を生じさせた揚げ句、2か月と短い会期を「熟議」をモットーに運営しようとすれば、成立する法律の数は限られるでしょう。所信演説で菅首相は「有言実行」を掲げましたが、肝心の中身(どんな政策を実現したいのか)を語らないことには、国政の停滞は避けられないと思います。

 円高は、9月半ばの市場介入で85円まで戻したものの、週末には再び83円台に入り、補正予算の編成が急がれるところです。しかし、未だに総額や内容の骨格は正式には示されず、この分では国会への提出は10月下旬にずれ込むようです。中国との関係も、4-5日の菅首相のA S E M出席の際に進展があるのか、逮捕されたままの邦人お一人の取り扱いを含め、当面の課題として残っています。年末の新年度予算編成では、マニフェスト項目の取り扱いや税制改革など、鳩山・菅政権が自ら設定した重い宿題にも答えを出さなければなりません。昨年9月から1年余り、現政権の足取りを振り返って年末を展望するとき、「政権担当能力」の面で、自然に行き詰まってしまうのでは…と思われてなりません。

 では、野党に転じた私たち自由民主党にそれが解決できるのか、と問われるならば、与野党を問わず、国政に携わる者に求められているのは、「持ち場持ち場で、時間を浪費せず、スタンド・プレーではなく、地道に課題を解決する粘り強い意思」ではないかと思い至っています。自分なりに、地方自治体での5年間の経験を糧に、地域の皆さんから寄せられる意見や要望も吟昧して、委員会質問や質問主意書という与えられた手段で国を一歩でも前進させようと決意を新たにしています。

 所属委員会は総務委員会と経済産業委員会になりました。党の政務調査会での議論を踏まえ、地域の自治体や企業にとって必要な国の施策や役割について審議・提起していきます。まずは、お金が循環し地域経済に確実に波及効果がある補正予算のメニュー提案と、公務員給与の望ましい在り方の審議からスタートです。日中関係が企業活動に与える影響や、中小企業金融の円滑化、国と地方との関係や郵政法案の取り扱い等についても党内議論を進め、委員会審議に臨んでいきます。質問主意書の第一弾では、弁護士養成の在り方の再検討を早期に進めるよう政府に求めました。

 この実りの秋に活動成果を着実に積み上げるよう、週明けからまた頑張ります!

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